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【南森町雑記】えぶりでいホスト

えぶりでいホストという漫画があります。

https://everyday-host.jimdofree.com/

本当に面白いので色んな人が読めば良いのにと思っています。

 

保険会社の営業職を辞めた関口が、ホストクラブ「クラブワン」のホスト「ハジメ」として働いた二年間を描く四コマ漫画です。連載中(現在50話)です。

第1話でクラブワン代表のコーイチが「ホストはお客さんにお酒を注文させ、それを全力で空けるお仕事」とハジメに説明したことから分かるように、この漫画は『夜王』のようなキラキラギラギラホスト漫画ではなく、転職先が見つからず自棄になった青年が飛び込んだホストクラブで過酷な仕事をこなす漫画です。しかも、第1話の時点でハジメが二年後にホストを辞めることが明言されており、お客を煽って酒を飲んでは嘔吐する辛いお仕事漫画でありながらも、まるでフィクションにしか存在しない美しい三年間の高校生活のような物悲しさを感じさせます。しかしまぁ、ホストクラブに二年もいたとも言えるわけで、ダメな人間をダメなまま生かそうとする場所は確かに居心地が良いものです。

そして何より凄いのは、この漫画は客の女性を一切綺麗に描いていません。まるでサウスパークのカナダ人のように簡潔な線で描かれているだけです。あくまでホストの仕事をホスト側から描くのだというストイックな姿勢が素敵です。

 

以下、私の好きなキャラクターとか話の紹介です。

 

第2話で、クラブワンでは枕営業が推奨されていることに面食らい、びっくりするくらいイケメンのホストリョ―イチのコンスタンティンばりの入墨だらけのお腹に目を奪われます。第3話では上半身全部見えます。

スペル(つづり)の意味も六芒星も知らないのに梵字だけは知っていてポケモン金銀世代の男。そして、天性のルックスを持つにもかかわらず致命的に金銭へのがめつさと算数を理解する頭がない男。なによりもアホなほど女に優しい男。最高ですね。

 

リョ―イチの二億円の借金を肩代わりし、酒を飲まずオラオラ営業をするセンイチの身元を引き受け、不調のハジメに特別ボーナスを出す男、それがクラブワン代表のコーイチです。彼が抱える狂気は今のところ細かく描かれることはありませんが、かつて銀座ナンバーワンのホストクラブ「トリリオン」で不動のナンバー3だった彼がクラブワンを何故立ち上げたのか、それは第24話から第27話に過去編というかたちで描かれています。戦うよりも守る人、奪うよりも与える人であるコーイチを表現するには無私というより虚無という言葉がピッタリです。

二十年間のホスト生活のせいで味覚がおかしくなっているところも哀愁です。中古の家を買って住んでいるのに、買った時からあった遺影をそのままにしているところも生き死にに淡々としていて恐ろしいです。

実家の造り酒屋を出て縁が切れたままの彼が、物産展で実家の酒を買っている第17話は胸に沁みます。元相棒のバクちゃんのわがままを許して、ラーメン屋(作中で誰もそのラーメンを好きな人がいない)に専念させている話(第19話)もコーイチらしい話です。

 

私が一番好きな、整形のし過ぎで表情筋が硬い身長185cmの大男ルイは「トリリオン」のナンバー2で、真っ白なスリーピースを着て太客を目黒のタワマン(ルイ維持マンション)に囲っているデカい男です。常に葉巻を咥えているし、なんか偉そうだし、クラブワンの開店前に管を巻きに来る迷惑な男ですが、悩んだ時には友人のネズミに相談し(第32話)、ランニング中に顔に汗が垂れないようにヘッドバンドを欠かさない(第34話)、同居している女たちのトラブル処理を怠らない(第47話)などキュートな面が多い男です。私は、大きくて不愛想な男が彼なりの流儀で誰かに優しくしているって場面がとにかく好きなんです。

 

えぶりでいホスト、えぶりでいホストです。

名前だけでも覚えて帰ってください。